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Radio Program

28th May 2024

Young Riders in the Space Business

宇宙ビジネスの若き騎手
宇宙ビジネス最前線 / 北海道が宇宙版シリコンバレーへ!

Special Guest:ODE DAISUKE

スペシャルゲスト:大出 大輔さま / アストロゲート株式会社 代表取締役


ー 本日のゲストは、アストロゲート株式会社 代表取締役 大出大輔さんです。よろしくお願いします。早速ですが、事業内容についてお聞かせください。

我々アストロゲート株式会社では、世界中のロケット発射場、これをスペースポートと呼んでおりますが、宇宙につながる港の企画運営を中心に取り組んでいる会社です。

ー 最初から宇宙ビジネスを志向してこられたのではなかった、と伺いました。

そうですね。実際、宇宙に携わっている方の多くは、ガンダムや宇宙兄弟、スペースシャトルやはやぶさなどのプロジェクトに憧れて、学生時代から宇宙のことを学んでいた方が多いです。しかし、私はもともと学生時代は建築が好きで、建築学科に進んでいます。キッカケは大学3年生の春休み。東日本大震災があり、耐震分野の研究者になろうと思い、研究を重ねてきました。大学院を卒業後、大林組というスカイツリーなどを建てた大きなゼネコンに入社し、耐震分野の研究者として働きました。

その後、大林組で新規事業を作る部署に異動し、AIやブロックチェーン、宇宙などの今後のビジネスにどう取り組むかを検討することになりました。その中で、宇宙ビジネスの大きなチャンスに気づき、特にロケットの発射場に大きなチャンスがあると感じたのです。

ー 私たちからすると、宇宙は少し遠い存在のように感じてしまいます。

たしかに、一般の方が宇宙と聞くと非常に遠い存在と感じられることが多いと思いますが、実は宇宙とは高度100キロ以上の場所を指します。これは東京から茨城までの距離であると考えると、実は非常に近い存在です。その上で、宇宙ビジネスとは何かと言いますと、ロケットで人工衛星を宇宙に運び、その人工衛星が地球上を回って、私たちの生活に役立っているというものです。

最も身近な例で言うと、天気予報です。人工衛星の画像から雲の状態を把握し、何日後にどの時間に雨が降るかを予測しています。また、GPSも非常に役立っています。位置情報は人工衛星からのデータで、道案内やビジネス用途、例えばUberEatsのような宅配サービスでも活用されています。これも宇宙ビジネスの一種です。

現在、大きなパラダイムシフトとして注目されているのは、人工衛星経由での通信網の構築です。イーロン・マスクさんのSpaceXが進めているStarLink計画では、地球の上空に何千機もの人工衛星を配置し、地球上どこにいても通信ができるようにすることを目指しています。すでに何千万人もの利用者がおり、世界中から通信量を獲得できるビジネスになっています。

このように、人工衛星の需要が急激に増えているため、ロケット会社はロケットの数を増やさなければなりません。そのためには、ロケットの発射場、すなわちスペースポートがもっと必要です。これらの課題を解決するために、新しい会社、アストロゲートを立ち上げました。

ー 日本にとっても大きなチャンス、なのでしょうか。

いろいろな成長分野の中でも、宇宙というのは日本にとって大きなチャンスだと考えています。確かに、AIやブロックチェーンの技術レベルで言うと、日本は世界トップ10に入っていないのが現状です。一方で、宇宙分野では、ロケットを自国の技術で打ち上げられる国は、私が始めた当時、まだ8カ国しかありませんでした。日本はその中に入っており、人工衛星の製造台数でも今世界5位ぐらいに位置しています。つまり、技術力の点で成長分野の中で日本がトップ10に入っているという優位性があります。

宇宙産業の中でも特にスペースポートという分野では、お金やマンパワー以外にも地理的優位性が重要です。この地理的優位性は変えようがないため、日本は世界に対して非常に強い力を発揮できる分野だと考えています。これにより、日本が勝てるチャンスが非常に高いビジネスだと捉え、取り組んでいるところです。

ー 資金面ではふるさと納税を活用されていると伺っています。

ロケットの開発となると、100億円以上の資金と10年以上の開発期間がスタンダードです。それを打ち上げるインフラとなるロケット発射場、つまりスペースポートの建設工事にも当然大きなお金がかかります。

北海道スペースポートで取り組んだ内容として、一つは国からの資金を獲得することです。ロケット発射場は空港や港と同じように重要な社会インフラであり、国が負担する部分があってもよいのではないか。そこで、国の関係者と話を進め、2021年にはデジタル田園都市関係の予算で11億円以上の国の予算を獲得しました。しかし、それだけでは足りませんので、大樹町とタッグを組んで企業版ふるさと納税という制度を活用しました。この3年間で、10億円以上の資金をさまざまな企業からいただきました。

スペースポートが日本にあることの重要性を多くの方々に説明し、約400社以上の企業に説明を行いました。結果として、150社以上の企業がこのプロジェクトに賛同し、多くの企業から少しずつ企業版ふるさと納税をいただき、これだけの大きな資金を集めることができました。

ー 宇宙ビジネスへのロマン、だけでこれだけの資金が集まるものでしょうか。

もちろん、宇宙のプロジェクトであるということは非常に大きなきっかけとなり、興味関心を抱いていただきやすいですし、ワクワクしながらお話を聞いてもらえるというのは非常に強い要素です。しかし、それだけでは企業さんも大きなお金を企業版ふるさと納税で寄付するのは難しいです。

そこで、このプロジェクトを通じて地方創生やこれから伸びる宇宙産業に協力している企業であるというPR効果が得られることを強調しました。また、このプロジェクトに関係する多くの企業様とつながるチャンスを提供し、新たな販路開拓や新規事業のきっかけとなる機会を意図的に作りました。そのような面から、多くの企業様に賛同していただきました。

ー 未来にワクワクしてきました!

ロケットはすでに打ち上げと着陸に成功しており、この技術を使えば飛行機のように人や物資をロケットに乗せて飛ばし、アメリカから日本に着陸させることも可能です。ロケットのスピードを考えると、東京からニューヨークまで40分で移動できるようになります。これが2030年代にはサービスインする予定です。

飛行機の歴史を振り返ると、今から110年前にライト兄弟が初めて人を乗せて飛び立ちました。この110年で飛行機は1日20万機以上飛んでいます。ロケットは60年前にユーリ・ガガーリンが人を乗せて宇宙に飛び立ちました。ということは、今から50年後には、1日20万機以上のロケットが人を乗せて移動していてもおかしくありません。

その時、離発着の場所がスペースポートになります。私たちが作っているスペースポートは、世界中と1時間でつながる場所になり、ビジネスや観光の新たな拠点として街や国が発展することを描きながら取り組んでいます。

ー これからの子どもたちにとっても、これは大きなチャンスですよね。

宇宙は目に見えてわかる面白いワクワクするようなプロジェクトが多く、子どもが憧れを抱きやすい分野です。例えば、ドバイでは、石油資源に頼らない科学立国を目指しており、その一環として宇宙に取り組むことで、子どもたちが宇宙や科学技術に憧れて勉強に励むようにしています。こうして育った技術者たちが宇宙だけでなく、AIやブロックチェーンなどの他の産業にも進むことができ、科学立国に非常に資する取り組みとなっています。

教育の面でも、宇宙のプロジェクトは重要です。私の新しい会社、アストロゲートでも、子どもたちへの宇宙教育に取り組もうと考えています。これをきっかけに子どもたちが宇宙に憧れ、宇宙に取り組むようになり、将来的には宇宙ビジネスで大きな成功を収める今の子どもたちが出てくることを楽しみにしています。

ー 本日はありがとうございました!