Special Guest:SATO NAOKI
スペシャルゲスト:佐藤 直樹さま / 田辺薬局株式会社 執行役員
田辺薬局の創業は1983年で、現在41期目に突入しています。次の8月で42期目に入る会社です。東京と神奈川を中心に、68拠点の店舗を展開している調剤薬局で、ドミナント展開という形で、一つの駅の周りに数店舗、または住宅街の中にポツンとあるような小規模な店舗展開をしています。目指すのは「皆様の薬局」です。患者様だけでなく、スタッフや医療関係者の方々も含めて、皆様に選ばれる薬局を目指しています。
強みとしては、ドミナント店舗展開の方法が一つ挙げられます。どういうふうに店舗展開してきたかというと、人の紹介が多いのです。クリニックのドクターから「これから院外処方に切り替えるので薬局をやってくれないか」という話があり、紹介で薬局を展開してきました。人を大事にし、人と人の縁を大事にする会社です。
もう一つの強みは在宅医療です。介護保険が施行される前から在宅医療に取り組んできました。普段外来で来られるおばあちゃんが急に来れなくなり、娘さんが来られるようになりました。その時、うちのスタッフが「どうされたんですか?」と尋ねると「転んで寝たきりになってしまって」という話を聞いたのです。そのスタッフは今の社長に「家に行きたい」と相談、社長が「行ってこい」と言ったのが始まりです。今では在宅医療は当たり前のようになっていますが、当時はチャレンジングなことであり、患者さんのためにできることを一生懸命考えるパイオニア精神が当社の強みだと考えます。
はい、私は家業を継ぐという認識はあまり持っていませんでした。ただ、会社を少しでも良くするために自分が何ができるかを常に考えています。社長の座を引き継ぐことにはあまり興味がなくて、それよりも会社の思いを大切にしてくれる人に任せたいと思っています。
AIに関してはまだ遅れている部分もありますが、数店舗で薬指導や健康指導をサポートするシステムを試験導入しています。例えば、患者のサマリー情報(タバコを吸うか、お酒を飲むか、性別など)から推測して、「こういう処方が良いのではないか」と提案するシステムがあります。最終的に指導するかどうかは薬剤師の判断に委ねられますが、こうしたシステムを試験的に導入しています。
患者さんにとって質の高いサービスを提供するためには、薬剤師が処方箋を読み解くことが必要です。しかし、AIがサポートしてくれることで、薬剤師が患者に寄り添ったコミュニケーションを取ることができます。AIが事前に情報を整理し、薬剤師が必要な質問をする手助けをしてくれるのは非常にありがたいです。この分野に関しては、積極的に進めたいと考えています。
国もデジタル化を進め、患者さんとのコミュニケーションやアフターフォローに力を入れるよう求めています。我々もその期待に応えるために結果を出していかなければならないと考えています。
現在話題になっているマイナンバーと保険証の一体化は、今後ますます進んでいくと思います。お薬手帳も電子化が進んでいますが、種類が多すぎてどれを選べばいいかわからないという課題があります。マイナンバーに集約されることで、お薬の情報が一元化され、持ち歩くことが忘れにくくなるでしょう。
また、処方箋が紙媒体からデジタル化されることで、薬局の選び方が変わってきます。薬局の近さだけでなく、薬剤師さんの対応やサービスの質で選べるようになるのは、非常にポジティブな変化です。患者さんが近いから仕方なく選ぶのではなく、積極的に選んでもらえるようになるのは私たちにとっても非常に嬉しいことです。これが進むことで、薬局業界全体が良くなると期待しています。
創業41年目ですが、大手に比べると知名度が低いため、エントリー数が少ないです。昨年からSNSを活用して会社の雰囲気を発信しています。これにより、会社の雰囲気が決め手となり入社を決める新卒の方も増えてきています。また、地域ごとのニーズに応えるために、現場からの吸い上げを重視しています。68店舗それぞれにリーダーがいるような感覚で、リーダー教育に力を入れています。主体性と圧倒的当事者意識を持てるような研修を新卒1年目から実施しており、徐々に成果が出てくることを期待しています。
本当に技術は日進月歩で進化しています。それに伴って人員配置や業務効率の向上が必要です。テクノロジーをうまく活用して推進していかないと、人手不足がますます深刻化します。私たちはイノベーション学を通して業界の明るい未来を目指して発信し続け、業界が少しでも良くなるよう努力していきたいと思っています。
こちらこそ、ありがとうございました。これからもよろしくお願いします。