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06th August 2024

What is Library and Information Science?

図書館情報学とは
現代社会を生きる私たち誰にも必要な学際的な学問領域を知る

Special Guest:SEN SUZURETSU

スペシャルゲスト:千 錫烈さま / 関東学院大学 社会学部現代社会学科 教授


ー 図書館にこそイノベーションが眠っている ! ということで、本日お話を伺いますスペシャルゲストは、関東学院大学社会学部現代社会学科教授の千 錫烈(セン スズレツ)先生です。ご専門である「図書館情報学」について、お教えいただけますでしょうか。

元々は図書館学という学問分野から始まった領域なんです。図書館学は図書館に関する事柄を研究し、図書館のサービスや管理運営などを学ぶ学問でした。しかし、コンピューターの登場とともに図書館のサービスや管理もコンピューターを使うようになりました。例えば、皆さんも図書館で本を検索するときにデータベースを使いますよね。これはOPAC(利用者に供されるオンライン蔵書目録のこと)と言いますが、こういったコンピューター技術が次々に導入されました。従来の図書館学の枠組みからもっと広く、情報自体の生成、収集、発信、利用などを含めて研究する学際的な分野になっています。

ー 具体的に、どういった内容をお教えなされているのでしょうか。

社会学部に所属していますが、関東学院大学の司書課程は実は全学部全学科に開かれています。例えば、理工学部の学生さんや、管理栄養士を目指す栄養学部の学生さんも受講しています。もちろんこれは図書館の職員さんになるための課程ですが、そもそも図書館というのは民主主義を支える基盤です。様々な情報を集めて提供することで、市民が情報を見たり聞いたりし、日々の生活や社会の在り方、今後どうしていくべきかを考えるきっかけになる場所です。

授業の中でも、人々に情報を与えることで行動のきっかけを与えることを強調しています。私の仕事は単純に本が好きということや本のことを知っているということではなく、情報と人を結びつける重要性をいつも強調しながら授業をしています。

ー 図書館司書もしくは図書館情報学を学ぶことは福祉マインドに近しいと感じました。

医療や福祉分野で働く方々は、例えば医療や福祉の勉強を専門的にしてきた学生さんが多いです。そこに図書館情報学の知識を組み合わせて現場に入ることができれば、さらなる知識武装となり、現場でも非常に役に立つのではないかと思います。知は力なりという言葉がありますが、様々な情報を収集し、それを社会で生かすことは非常に大事です。ですから、図書館情報学と福祉の組み合わせは素晴らしい取り組みだと思います。

ー 図書館そのものの価値についてお伺いさせてください。エリック・クリネンバーグ氏の著書「集まる場所が必要だ」を読みました。1995年のシカゴの熱波で、社会的孤立が政治を分けた要因だと述べられていましたが、社会的孤立が起こらなかった場所には図書館が存在していたそうです。

図書館に期待される役割は大きく分けて3つあります。

1.教育機能: 図書館は社会教育施設であり、生涯学習や読書活動の推進を行います。図書館は本を借りる場所というイメージが強いですが、教育機能が大きな役割を果たしています。

2.情報提供機能: 図書館は情報を提供し、情報格差の是正を図ります。情報を持っているかどうかで人生が有利になるか不利になるかが決まることもあります。図書館は全ての人々に平等にサービスを提供し、地域の情報センターとしての役割を果たします。

3.場の提供: 図書館は娯楽や癒しの場所であり、人々が集まるサードプレイス(職場でも自宅でもない第三の場所)です。最近では地方の活性化にも寄与しており、他の公共施設に比べて利用者数が多いことから、場の提供という機能がクローズアップされています。

ー 注目すべき図書館について教えてください!

いくつも注目すべき図書館があります。例えば、国内では県立長野図書館が挙げられます。こちらは「学び創造ラボ」というクリエイティブコモンズのようなスペースがあり、3Dプリンターなどのデジタル機器を使ってクリエイティブなものづくりができる場所です。また、県立長野図書館では「体験の貸出」を行っており、スライダーや双眼鏡、キャッチボール用のスピードガンなどを貸し出しています。これはアメリカの公共図書館で行われている「Library of Things」のような取り組みで、日本では珍しいものです。

もう一つ注目すべき図書館として、韓国の釜山にある国会釜山図書館があります。こちらは国会図書館の釜山支部として2年前に開館しましたが、一般の公共図書館の要素も持ち合わせています。特に印象的だったのは、閲覧席に心地よいソファが置かれており、利用者が寝そべりながら本を読める環境が整っていることです。日本では寝そべりながら本を読むことは注意されることが多いですが、韓国では人々がくつろいで長く滞在できるような工夫がされています。

ー 福祉施設と図書館が連動するような企画ができたら面白いかな、とお聞きしながら感じました。

図書館は全ての人を対象としているので、特別な支援が必要な利用者に対しても様々なサービスを提供しています。最近では、認知症のためのコーナーを設けて、ご家族やご本人が認知症について理解を深めるための取り組みが行われています。また、図書館では本の展示だけでなく、イベントを通じて啓発活動を行うことも多いです。

私の専門の研究は、図書館における利用者の問題行動についてです。図書館は民主主義の基盤を支える公共施設なので、簡単に入館禁止にすることはできません。人権問題に発展しかねないため、基本的にはどなたでも利用できるようにしています。図書館は、静かに過ごしたい人には静かにさせてあげることも重要です。例えば、鎌倉市立図書館で「学校が始まるのがつらい子は図書館へいらっしゃい」というツイートがバズったことがあります。図書館は、利用者の自主性を尊重し、困っている人には相談に乗るが、強制はしないという姿勢を持っています。

ー ところで、先生は、なぜ図書館情報学に魅せられたのでしょう?

もともと小さい頃から本は好きだったんですけれども、読書から図書館に興味が変わった大きなきっかけは、中学校に入学した年に中学校の隣に公共図書館ができたことです。身近に図書館ができるのは初めてで、放課後や部活の後に通うようになりました。たくさんの本があり、みんなが本を読んでいて、職員さんもとても優しかったので、すっかり図書館の虜になってしまいました。

その後、司書の資格を取ることができ、自分が通っていた図書館で実際に働くこともできました。そこで働いていた日々は本当に幸せでしたが、困った利用者の対応をもっとスマートにしたいと思い、大学院に進学しました。本当はまた現場に戻りたかったのですが、教員の道に進むことになりました。もし私の中学校時代に図書館が隣になかったら、今の人生は全然違うものになっていたと思います。

ー 図書館にちょっと足を運んで、そして図書館に触れることで人生が本当に豊かになるなということを改めて先生から教えていただいたなと思っております。ありがとうございました!