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27th August 2024

Leaders are not great.

リーダーは偉くない。
「超実践的リーダー論」楽天球団の経営を躍進させた経営者を直撃!

Special Guest:TACHIBANA YOZO

スペシャルゲスト:立花 陽三さま /元東北楽天ゴールデンイーグルス 代表取締役


ー 本日は、元東北楽天ゴールデンイーグルス社長であられます立花陽三さんを招きしてお話を伺っていきたいと思います。立花さん、どうぞよろしくお願いいたします!今はお寿司屋さんの社長もされているんですよね。

はい、そうなんです。球団社長の時から時々行っていた塩釜にあるお寿司屋さんがありまして、そこの前オーナー兼社長から連絡をいただきました。私が会社を辞めるというニュースを見て、ちょっと自分も高齢になったので、塩釜港という地元で人気の回転寿司屋を引き継いでくれないかとお話をいただいたんです。

そこで初めてお寿司の世界を勉強し始めて、就任させていただきました。当時は1店舗だったのが、今は3店舗になりまして、年内にもう1店舗、さらに2年後にはもう2店舗ほど出す予定で、今拡大しています。

ー ご執筆なされた『リーダーは偉くない』(ダイヤモンド社)からご質問させてください。リーダーシップとは一言で言うと何でしょうか。

リーダーシップには「こうあるべき」という理想像が多く語られています。私も本を読んで勉強しましたが、リーダーシップは一人一人によって違うものだと思っています。これは、人の真似をしても部下はついてこないという意味です。100人いたら100通りのリーダーシップがあるはず。本に書いてあるからこうあるべきだとか、KPIを設定するべきだとか、社員のモチベーションを上げるにはこうするべきだとか、いろいろなことが言われていますが、部下からすると「この人、なんか薄っぺらいこと言ってるな」と感じてしまうことが多々あります。

実は、私自身もそれをやって失敗した経験があります。結局、それまでの経験や自分の生き方を部下は見ているので、それをしっかり出せる準備をしておかないと、リーダーになった時に自分が非常に辛くなるということを伝えたくて、本を書かせていただきました。

ー もともとはスポーツ業界にいたわけではなかったんですよね。

学生時代はずっとラグビーをやっていて、体育会系で育ちましたが、その後は金融機関に進みました。最初はソロモン・ブラザーズという外資系の証券会社に入り、約18年間、外資の金融業界に身を置いていました。

ー どういったきっかけで東北楽天ゴールデンイーグルスの社長に就任されたのでしょうか。

楽天の三木谷さんと食事をしている時に、「立花君、球団社長やらないか」と声をかけられたのがきっかけです。三木谷さんが私を選んだ理由は、どうやら「胆力がある」と思っていただけたからのようです。振り返ってみると、私自身も一生懸命いろんな人に会っていました。それが楽天球団の社長になりたかったわけではなく、三木谷さんからいろいろ学びたいと思って会っていたのですが、そういったことを続けていると、いろんなチャンスが巡ってくるのではないかと感じています。

ー 社長就任後、色々な挑戦をなされたとお聞きしています。

東京育ちで、東京にいるとやはり巨人やヤクルトが身近な存在でした。私はヤクルトファンだったんですけど、2012年頃はパ・リーグも人気が出始めていましたが、平日の昼間の試合は観客が少なかったですね。社員に観客が少ない理由を聞いたら、「うちは一切招待券を配っていません」と言われました。「なるほどじゃあ、招待券配れば一杯にできるんですか」って聞いたら「できます」って言うんです。それで試しに招待券を配ってみたんですが、全然満席にはならなかった。

社員たちは満席になると思っていたようですが、実際にはそうならなかった。そこで気づいてほしかったのは、これが我々の実力だということです。仕事がうまくいかない理由を他のせいにしてしまうことが多いですが、これがビジネス上非常にまずくて。そうやって負けていい根性というか、負けていい風習みたいのを変えるっていうのがすごい大変でした。

ー こうした挑戦の背景には、ラグビーで学ばれたことがあると本書にお書きになられています。

ラグビーというスポーツは、ボールを前に投げることが禁止されています。キックは前に蹴ることが許されていますが、キックを受け取ることができるのはボールの後ろにいる選手だけです。このため、プレー中は必ず敵が前にいる状況になります。つまり、後ろから突然攻撃されることは基本的にないスポーツです。

15人の選手が横に並んで守るラグビーでは、全員が守りきれば相手に得点を許さないスポーツです。でも、1人か2人でもサボると守備に穴ができ、その瞬間に全体が崩れてしまいます。だから、全員を信頼しなければならず、1人でもサボると得点を許してしまう。このような経験を通じて、連帯感や信頼を学びました。野球やゴルフ、テニスといったスポーツも大好きなんですが、ラグビーには特有の面白さがあります。これらの経験は、社会に出てからも活かせる部分があると感じています。

ー また、「グレーゾーンにおけるフェアプレイ精神」という箇所にも感銘を受けました。

いろんなシチュエーションがありますが、ビジネスにおいてルールを知っていることは非常に重要です。学生さんと話すときに「仕事において勉強できることは重要ですか?」と聞かれることがあります。正直、その答えはまだ持ち合わせていませんが、1つだけ言えるのは、ルールを知っている人は強いということです。ルールを知るためには勉強が必要で、その勉強は学生時代の勉強と結びついていることが多いと感じます。野球のルールはとても細かいのですが、ルールを知っていると知らないでは大きな違いがあります。

ビジネスにおいても同様で、株式投資を例にとっても、ルールを知らない人が入ってきても勝つことは正直難しい。ルールを知っていることで、どこがブラックでどこがグレーかを理解し、その中で戦うことができます。これは外資系での経験から学んだことで、ビジネスをする上では、ここはダメっていう線のギリギリを攻めるのが最も勝てる方法かなと思っています。

また、お金を儲ける方法や仕事を成功させる方法について、結果は同じでも、その過程が非常に重要だと思います。例えば、ブラックな手段で得た10万円や100万円は、心の中でマイナスの感情を引き起こすものです。人をだまして得たお金は決して幸せをもたらしませんし、そういった手段を取った人は、最終的にゼロに戻ってしまうことが多いと感じます。

一方で、人のため、世の中のために正々堂々と行動し、グレーゾーンに近いところで戦って得たお金は、堂々と人に伝えることができ、良い循環を生むと思います。これに気づいた人は、良いサイクルに入ることができるでしょう。逆に、他人をだましたり、不正な手段で成功しようとする人は、最終的には厳しい結果に直面するのではないかと、私の人生経験からも感じています。

ー いま、新たな挑戦をされていると伺っています。甲子園に関連するとか!?

元プロ野球選手の方から突然連絡があり、「アジアでプロ野球をやりたい」と相談を受けました。彼は「甲子園が夢だった」と言い、それがなければ自分の人生がどうなっていたかわからないと話していました。私も小学校から甲子園が大好きで、野球界に約10年間勤めてきました。現在、プロ野球は非常に人気がありますが、人口減少という大きな課題があります。その中でアジア戦略を考えると、野球はまだグローバルスポーツになっていません。

ヨーロッパやアジアでは野球のルールを知っている人が少なく、クリケットの方が知られています。そこで、どうやって野球をグローバルスポーツにするかが課題です。彼から話を聞いたときに、アジアで甲子園が盛り上がることができれば面白いと思いました。

アジアには約6億人がいます。その中で野球のルールを知る人が増えるだけでも大きな価値があります。1925年の甲子園創設時のように、100年後にアジアでどれだけ野球が広まっているかはわかりませんが、その夢に賭けたいと思っています。具体的には、元巨人の選手である柴田君、漫画『ドラゴン桜』の三田先生と私の3人で、スポンサーを集めて12月にインドネシアで大会を開催します。私たちのビジョンは、100年後に日本の甲子園並みの大会をアジアで開催し、日本の甲子園優勝チームとアジアのチームが戦うことです。

フランスの柔道が日本よりも人気があるように、日本の良い文化を輸出したいと思っています。日本の応援文化や礼儀、挨拶の文化などをアジアに広めたいと考えています。これを実現するために、全員で頑張って取り組んでいます。

確かに、インドネシアで野球を広めるのは難しいという声もありますし、批判も多いです。しかし、日本の野球が100年後にどうなっているのか、誰も答えを持っていないのが現状です。だからこそ、新しいマーケットを誰が開拓するのかという問いに対して、誰かが挑戦しなければなりません。私はその挑戦をサポートしたいと思っています。

ー 次回、私もぜひインドネシアにお邪魔させてください。本日はありがとうございました!