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Radio Program

03rd September 2024

The age of cosmic habitation is upon us!

宇宙居住時代到来!
宇宙での食料生産と供給を目指す最先端研究に迫る

Special Guest:TACHIBANA YOZO

スペシャルゲスト:髙橋 秀幸さま /千葉大学大学院 園芸学研究院附属 宇宙園芸研究センター センター長


ー 本日のテーマは「宇宙」です!千葉大学大学院園芸学研究院附属 宇宙園芸研究センター センター長であられる、髙橋秀幸先生です。よろしくお願いします。早速ですが、髙橋教授、宇宙環境を利用した植物科学研究の背景について教えていただけますか?

はい、この分野は1960年代以降、宇宙空間を研究に活用できるようになったことから始まりました。宇宙の無重力環境や真空状態など、地球上にはない特殊な環境を利用できるのが大きな特徴です。特に、重力に対する植物の応答を研究するのに適しているんです。

宇宙ステーションでは長時間の実験が可能になり、植物の生活環全体を観察できるようになりました。現在、各国が宇宙空間で植物を育てるための栽培装置を開発・設置しています。特にアメリカとロシアは大型の栽培装置で小麦や野菜を栽培し、宇宙飛行士が実際に食べる実験も行っているんですよ。

ー 最近話題の月・火星探査計画と、この研究はどう関連しているのでしょうか?

アルテミス計画など、長期宇宙滞在のための計画が具体化してきています。そこで重要になってくるのが、現地での食料生産です。これが不可欠だという認識が高まっているんです。千葉大学の園芸学部と工学部の強みを活かした研究センターとして設立されました。3つの研究部門、つまり宇宙園芸育種、高効率生産技術、ゼロエミッション技術を設置し、宇宙用の植物品種開発、効率的な生産技術、物質循環システムの研究を行っています。

主な目標は3つあります。まず、宇宙滞在のための食料生産の基盤を作ること。次に、この分野の人材育成を行うこと。そして、研究成果を地上の社会に還元し、産業化にも貢献することです。宇宙での研究が地球上の課題解決にも役立つと考えています。

ー 食の観点からどのようなアプローチをされているのでしょうか?

宇宙に行くと筋肉が萎縮したり、骨が脆くなったりするなど、いろいろな健康上の問題が起こります。心理的な問題も含めて、そういったことを防ぐために食べることで何か可能にできないかと考えています。例えば、宇宙での筋肉の衰えを抑制するタンパク質の働きを抑える成分が植物にあることがわかってきました。そういう成分を多く含む「宇宙品種」を開発し、宇宙で暮らす人がそれを食べることで、宇宙における様々な問題にある程度対処できるようになればと考えています。

ー こういった研究の商業化や民間企業との連携についてはいかがでしょうか?

私たちの最終的な目標の一つに研究成果の事業化があり、そのためには民間企業との連携が必須です。例えば、私たちが参画している団体の一つに「スペースフードスフィア」というものがあります。ここには日本のいろんな企業さんが50社以上参画されていて、毎月1回会合を開催したり、数ヶ月に1回は対面で集まったりしています。そこで食品関係のメンバーの方々が宇宙食を作ってくださって、我々がそれを試食させていただくこともあります。

また、宇宙で暮らすために空気や水の再利用はこれまでも行われてきましたが、私たちは植物工場における物質の再生循環利用にも注目しています。これについては、いろんな企業さんと一緒に進めています。企業だけでなく、地方自治体の団体さんなども含めて、共同研究という形で取り組んでいる部分もあります。

ー こうした研究結果が地球上の私たちにとっても何らかの形でイノベーションを起こす可能性はあるのでしょうか?

宇宙園芸研究は、ある意味で究極的なことを目指しているわけです。これは地球上の農業生産や人間の生き方、社会そのものに大きな影響を及ぼす可能性があると考えています。例えば、植物工場という観点では、現在も皆さんが食べているレタスなどの葉物野菜がありますが、まだ課題も多いです。私たちが宇宙を念頭に行っている研究は、地球上の植物工場における諸課題を解決する手段にもなると考えています。

私たちの月面農場ワーキンググループでは、栄養的な観点や日本人の嗜好性、植物工場での生産性などを考慮して、8種類の作物を選定し研究を進めています。これらを適切な栽培空間で持続的に栽培できれば、一人を1年間健康に養うことができると想定しています。さらに、人工光の閉鎖型の中で稲を栽培すると、現時点で田んぼの収量の3倍くらいの収量を得ることができています。これは、環境制御による短期間での収穫や、年間2-3回の栽培サイクル、そして立体的な栽培方法によるものです。

ー こういった宇宙での居住や食料生産が実現するのはいつ頃....?

私自身は70歳を過ぎていますので難しいかもしれませんが、皆さんなら宇宙における人類の生活や宇宙旅行を体験できる可能性は十分にあると思います。アルテミス計画に沿って進めば、来年あたりに人が月を周回して帰ってくる予定です。その後、月の周回軌道上に小さな宇宙ステーションを建設し、それをプラットフォームにして月面活動や火星探査が行われる予定です。

月面での最初の滞在は4-5人程度からスタートし、彼らのための食料生産システムや生命維持システムが作られると思います。月面ワーキンググループでは、2030年代には100人以上が月面で暮らすようになると想定して、様々な検討を行っています。このように、少しずつ規模を拡大していく方向で、まさに今、事が動いているということです。

ー 先生方の研究が実用化されるような形でいい方向に進めば、我々も非常にうれしい限りですし、我々も共に何か一緒になって微力ですが、頑張っていければと思ってますので、ぜひよろしくお願いいたします!今日はありがとうございました!