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1st October 2024

Management Strategies to Create a Clinic of Choice

選ばれるクリニックをつくるための経営戦略
香川県の小さなクリニックが巨大医療グループへと拡大できた理由とは!?

Special Guest:MATSUMOTO YOSHIHITO

スペシャルゲスト:松本 義人さま /西高松グループ 理事長


ー 本日のスペシャルゲストは、西高松グループ代表、松本義人先生です。よろしくお願いいたします!ご著書「香川県の小さなクリニックが巨大医療グループへと拡大できた理由」を拝読させていただき、本日お時間をいただきました。早速ですが、西高松グループの設立から現在に至るまでの歩みについて、お聞かせいただけますか?

最初は脳神経内科クリニック1件の運営に全力を尽くそうと考えていました。17年経った今、このような大きなグループになるとは全く想像していませんでした。まず、最初の脳神経内科クリニックを開設しました。高齢化社会の到来を見据え、23件の往診を引き受けました。その経験から、往診専門のクリニックの必要性を感じ、在宅クリニックを開設しました。しかし、老人施設のオーナーとの関係悪化などの理由で、在宅クリニックは閉鎖せざるを得なくなりました。その後、市内のクリニックのM&A話があり、そちらに参入しました。

ー その後、検査に特化したクリニックも開設されたそうですね。

はい、内視鏡診断クリニックと画像診断クリニックを開設しました。これらは検診やドックにうまくマッチし、成功しました。老人施設の高齢者の方々の需要も高く、内視鏡検査やCT、MRI検査の需要が増えたことも成長の要因です。さらに、ブレインハートクリニックを開設しました。脳と心臓を一緒に診る新しいコンセプトのクリニックです。これにより、今年の4月に7件の医療グループになりました。

ー 一般的に医療法人は院長の名前を冠したり、1クリニックのみを経営することが多いと思います。しかし、先生のグループでは複数のクリニックを展開し、医師同士で採用も行っているようですね。これはなかなか難しいことだと思うのですが、どうしてこのような展開ができているのでしょうか?

一番のポイントは良い医師を招くことだと思います。我々のスタンスが良かったのかもしれません。まず、「逃げない患者さん」が多くいるという基盤があります。これにより、新しい医師を採用する際にある程度の経済的余裕があるんです。

ー 「逃げない患者さん」というのは、どういう意味でしょうか?

主に老人施設の患者さんたちのことです。彼らは定期的に診療や検査が必要で、安定した患者基盤となっています。この基盤があるからこそ、「とりあえず雇ってみよう」という積極的な採用姿勢を取れるんです。結果的に、画像診断や内視鏡の優秀な先生方が集まってくれました。良い医師が集まると、さらに良い医師が集まるという好循環も生まれています。

また、選ばれるクリニックになるために、質の高いサービスやホスピタリティを提供することは非常に重要だと考えています。常にそれを意識して経営しています。

ー 医療技術に関してもお聞きしたいのですが、先生のクリニックには大学病院レベルの最新機器が導入されていると伺いました。

我々が見落としたら、次にその患者さんの本当の病気を見つけてくれるところがないかもしれないという意識で診療しています。そのため、MRIやCTなどの機器には惜しみなく投資するようにしています。先生方には「査定されることを気にせず、機械があるのにそれを使わずに見落としや誤診があったらダメですよ」と伝えています。査定された後の責任は私が取りますからと。

これは未病予防というよりも、未病の発見につながると考えています。大学病院や大きな病院と違って、基本的には自分の意思で来てくださる方々が多いんです。来院される方の多くは、「病気があるかもしれない」と思いながらも、「病気はないはずだ、ないといいな」と思って来てくださっています。つまり、基本的には日常生活を普通に送れている方々なんです。そういう意味では、大きな病院とは違った特徴があります。

元気に生活されている方々の中から、潜在的な健康リスクを見つけ出し、早期対応することで、より健康な生活を送っていただくことができればと考えています。

ー MRIやCTといった検査は、一般的にはかなり大掛かりな検診というイメージがありますが、受診しやすい環境づくりについて、どのようにされてきたのでしょうか?

私たちは「なるべく今日来てくださった患者さんを1週間後や1ヶ月後に検査しましょう」という形にはしないようにしています。具体的には、「少々お待ちいただくかもしれませんが、今日検査を済ませて、その結果までお見せします。少々の待ち時間を我慢してください」というアプローチを取っています。つまり、後回しにしないようにしているんです。

患者さんも「今日安心して、夜までには何の病気もなかったとわかり、安心して生活できる」という思いで来てくださっています。また、大きな病院や大学病院と違って、私たちのクリニックには入院施設がありません。そのため、「その場で入院してください」ということにはなりません。こういった点も、患者さんが気軽に来てくださる理由の一つだと思います。

ー 地域づくりや町づくりにまで踏み込んだ、地域に開かれたクリニック経営をなされている、ということなんですね。

はい、まず大切にしているのは、老人施設や介護施設のスタッフとの関係性です。私たちは彼らを「自分たちのスタッフではない」と考えています。つまり、対等な関係を築くことを心がけているんです。施設スタッフの態度や医療内容に問題があっても、直接叱責することはありません。代わりに、良い方向に向かうための知識共有を心がけています。上下関係をつくらず、コミュニケーションを取りやすい環境づくりに注力しています。

ITツールも積極的に活用しています。例えば、カナミックシステムという医療と介護をつなぐコミュニケーションツールを導入しました。このシステムにより、患者ごとの情報共有やチャット形式での連絡が可能になりました。施設スタッフが気づいたことをシステムに入力すると、私たち医師が診療の合間に確認し、適切な指示を出せるようになりました。

ー 「Nobori」というアプリケーションも採用されていると伺いました。

患者さんご自身がスマートフォンやPCで自分のデータを見ることができるアプリケーションも導入しています。施設に入所されているお母さんの家族が大阪や東京にいる場合でも、このアプリを通じて検査結果や採血データを確認できます。これにより、遠方にいる家族も安心感を得られています。また、通常の外来患者さんも、自分の検査結果をすぐに確認できるので、わざわざ病院に結果を聞きに来る必要がなくなりました。

ー 経営が行き届いていると感じます。

正直なところ、特に学んできたわけではなく、最初は行き当たりばったりでやってきました。ただ、各クリニックの院長先生たちに自分の「城」を任せ、その成果を見える化しています。電子カルテを導入しているので、日々の点数や月の実績などを院長先生方が簡単にチェックできるようにしています。データを経営者だけが知っているのではなく、みんなで共有することで、各自が経営意識を持つようになりました。

最近では、Googleの患者さんの口コミ評価なども気にかけるようにしています。こういった情報をグループ内で共有することで、サービス向上への意識も高まっています。

ー 本書の中で、オンライン上で外来を一覧化し、クラウドシステムを使って受付、問診、診療データを統合したバーチャル総合病院を作っていくという記述がありました。

まず、私たちのクリニックにはベッドがないので、入院施設はありません。しかし、大学病院や市立病院のホームページを見ると、各科の診療スケジュールが曜日ごと、午前・午後ごとに細かく掲載されています。これは常勤医師が20人、非常勤医師も同程度いるからできることです。私たちのグループでは、ホームページ上で専門分野ごとやクリニックごとの診察表を掲載しています。さらに、グループ全体の内科や消化器科などの診療スケジュールを一覧で見られるようにしたいと考えています。

つまり、大規模病院のような外来診療表をオンライン上で再現しようということです。例えば、ドクターの名前をクリックすると、その医師が今日はどのクリニックで診療しているかがすぐにわかるようなシステムを目指しています。実際には小さなクリニックが7つあって、各クリニックには2-3人の医師しかいないのですが、大きな病院の中にたくさんの診療科があるような雰囲気をホームページ上で作り出したいんです。

実際の物理的な制約を超えて、オンライン上でより充実した医療サービスを提供できる環境を作り上げていきたいと思っています。

ー 今後の発展が本当に楽しみです。本日は本当にありがとうございました!