Special Guest:MATSUMOTO NAOTO
スペシャルゲスト:松本 直人さま / 株式会社ABAKAM 代表取締役
実は、アバカムは私の個人会社なんです。プロダクトを作って販売するというよりは、現在は企業の顧問やアドバイザーとして活動しています。スタートアップ業界では、どうしても急成長してユニコーン企業になるというようなビジネスにしか投資が集まりにくい現状があります。ですが、それでは多様なスタートアップが育ちません。私が目指したのは、もっと多様性のある投資家を増やすことです。利益だけでなく、たとえば「地域を良くしたい」「オープンイノベーションを進めたい」といった理念を持つ投資家を育てることで、多様なスタートアップを生み出したいと考えています。
まさにその通りです。私たちが提供しているのは、投資の「ノウハウ」や「資金の回収手法」です。通常、未上場企業の株式は流通していませんので、上場して初めて売却できるようになりますよね。でも、私たちは「上場せずに株式の流動性を確保する」方法を開発しています。たとえば、会社が特定の条件で株式を買い戻す「自社株買い」の仕組みです。これによって、上場しなくても一定のリターンを得られるモデルが構築できます。
議決権のない株式を発行することで、経営権を守りながら資金を調達することができます。また、単に会社が買い戻すだけではなく、「エクジット・トゥ・コミュニティ(ExittoCommunity)」といって、従業員や取引先など、企業のステークホルダーに株式を譲渡する形も取れるんです。
そうですね。ただ、課題もあります。経営者や投資家、さらには税理士や弁護士など、関係者全員がこの仕組みを正しく理解する必要があります。普及のためには、わかりやすい解説書や事例紹介も欠かせません。
在任中に37本の地域創生ファンドを設立しました。地域金融機関が「株主として地域企業を応援する」ことで、地域経済が活性化する仕組みです。ただ、これまでは金融機関が「ファンドの運営を他社に任せきり」になってしまうことが多かったんですね。これを「自社で運営し、ノウハウを蓄積する」形に変えていきたいと考えています。融資だけでは企業の成長を支援するモチベーションが低くなりがちですから。投資によって、「地域の小さな企業でもリスクマネーを得られる」ようにしたいのです。
失敗の定義が一般的なファンドと少し違います。上場を目指すファンドでは「上場できなかったら失敗」ですが、私たちのモデルでは、「会社が潰れなければ失敗ではない」と考えています。ただし、投資家側が途中で支援を諦めてしまうと、回収が難しくなることもあります。ここが一番の課題ですね。