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Radio Program

10th June 2025

Changing Society from Just ¥10,000

1万円から社会を変える
テクノロジーと信念で社会課題に挑む、新しい資産形成と社会貢献のカタチ

Special Guest:YOKOTA DAIZO

スペシャルゲスト:横田 大造さま / クリアル株式会社 代表取締役社長 執行役員 CEO


ー 本日のテーマは「不動産投資」です。「不動産投資」と聞くと、一部の富裕層が手を出すもの、高額な初期費用が必要、そしてハイリスク——。そうした常識を覆す、わずか1万円から不動産投資を始められる画期的なサービスを展開し、多くの個人投資家から注目を集めている企業があります。今回お話を伺うのは、クリアル株式会社 代表取締役社長 執行役員 CEO 横田大造さんです。本当に、1万円から不動産投資ができるんですか?

はい、できるんです。

私たちが展開しているのは、クラウドファンディングを活用した不動産投資サービスです。スマホやPCからオンラインで、1万円という少額から始められるように設計しています。

これまで不動産投資といえば、多額の資金を持つ一部の層しかアクセスできないものでした。でも私たちは、一般の方にも「資産形成の選択肢」として開かれた仕組みを提供したいと考えています。手軽に始められ、なおかつミドルリスク・ミドルリターンを目指せる商品として、多くの方にご支持いただいています。

ー このサービスはまさに、不動産投資の“民主化”ですね。横田社長が掲げるこの理念は、投資家のどんなニーズに応えているとお考えですか? また、どのような点が利用者の心を掴んでいるのでしょうか。

おっしゃる通り、不動産投資はこれまで、個人にとっては非常に“遠い存在”でした。「借金をしないと始められない」「情報が複雑でわかりにくい」「悪徳業者のイメージがある」——そういったバイアスが今でも根強くあります。

しかし一方で、投資のプロである年金基金や機関投資家たちは、不動産投資をポートフォリオの中核に取り入れています。実際、6〜8割以上のプロが不動産に投資しているのが現実です。

不動産は一般に「ミドルリスク・ミドルリターン」の資産です。高リスク高リターンの株式や、ローリスクローリターンの国債の“中間”に位置する、非常にバランスの取れた選択肢なのですが、日本にはこの“中間”の選択肢がほとんどありませんでした。しかも、総務省のデータでは、不動産投資を経験した個人はわずか3%以下。圧倒的に少ないのが現状です。

そこで私たちは、この「プロが選ぶ資産運用」を誰でも使えるものにしたいと考えました。ITの力で仕組みをオープンにし、たった1万円から始められるように設計することで、不動産投資をより多くの人にとっての“身近な選択肢”に変えたかったんです。

ー こうしたサービスが実現するには、当然ながら大きな課題も乗り越えなければなりません。その原動力となった問題意識やビジョンについて、改めてお聞かせいただけますか。

「クリアル(CREAL)」という社名は、Clear Real Estate(クリアな不動産)に由来しています。

かつての不動産業界は、情報の非対称性が大きな問題でした。限られた業者だけが情報を握り、都合の悪い部分は隠され、一般の人々は不利な条件で取引をしていた……。そんな実態があったと思います。私たちは、そうした構造をITとDXの力で解消したいと考えています。「誰もが安心して、当たり前のように資産運用できる世界をつくる」。それが、私たちの掲げるビジョンです。

今、政府も「資産運用立国」を掲げ、投資を国民的な活動として後押ししようとしています。でも実際はまだ、多くの人にとって投資は“特別な行為”です。私たちはそれを「日常の習慣」に変えたいんです。たとえば、かつてネットショッピングやフリマアプリを使うことは一部の人のものでした。でも今では、スマホで誰もが当たり前のように使っていますよね。不動産投資も、いずれそのレベルで日常に溶け込むと信じています。

だからこそ、1万円から始められて、スマホ一つで完結する仕組みをつくった。不動産投資を「もっとも遠くて、でも本当は必要な資産運用」から、「最も身近で、当たり前の選択肢」へと変えていきたい。それが、私たちクリアルの挑戦です。

ー 横田さんは現在、クリアル株式会社のの創業者であり、現在は代表として活躍されていますが、早稲田大学政治経済学部を卒業後、アクセンチュアに入社され、コンサルティング業務に従事されました。当時から、不動産の「民主化」に取り組もうという問題意識をお持ちだったのでしょうか?

いえ、新卒でアクセンチュアに入社したときは、まったくそんなことは考えていませんでしたね。アクセンチュアは、ITを活用して古い業界を新しくするというコンセプトのもと、さまざまな企業に対してコンサルティングを行っていました。私はその中で、古い業界や企業にITをどう取り入れ、業務を変革していくかという点に興味を持つようになりました。

その中で、不動産の証券化に関するプロジェクトに関わる機会がありました。それが非常に面白くて、不動産業界に強く惹かれたのが次のキャリアに進むきっかけになりました。

次に進んだのは、不動産ファンドの世界です。不動産投資には、物件に関する知識だけでなく、金融に関する深い理解も求められます。私はその「不動産×金融」の領域に魅力を感じ、そこでキャリアを積んでいきました。

ー 不動産というのは「一物一価」で所有者も限られています。その意味で、投資対象としての透明性や参加のしやすさには課題があると感じます。それを1万円から、誰でも参加できる仕組みとして実現されている点に大きな社会性を感じました。こうした仕組みを両立させようという発想は、どういった経緯やご経験から生まれたのでしょうか?

先ほどお話ししたとおり、アクセンチュアでの経験を経て、オリックス、そして外資系の不動産ファンドに移り、不動産投資の基礎から応用までを学びました。その後、新生銀行(現・SBI新生銀行)の社内ベンチャーとして、J-REITの立ち上げに関わることになります。

中でも、私が事業責任者として立ち上げたのが、日本で初めて介護施設や病院に特化した「ヘルスケアREIT」です。この分野の不動産は、社会的にも非常に重要で、かつ安定したリターンが期待できるにもかかわらず、いくつかの大きな壁に直面しました。

最も大きな課題は、投資資金が集まらなかったことです。ヘルスケアREITのような事業に出資してもらうには、年金基金などの機関投資家が主な対象になりますが、彼らにとっては施設単位の投資額(15〜20億円規模)が小さすぎて効率が悪い。また、投資対象としての歴史が浅く、トラックレコード(過去の実績)が少ないこともネックとなりました。

そうした理由から「投資できない」と一蹴されることが続き、非常に苦しい思いをしました。ただ、そのとき強く感じたんです。——「プロの投資家が出資できないなら、ITを活用して一般の個人投資家から資金を募ればいいのではないか」と。

社会にとって必要な資産であり、かつ安定した収益性を持つアセットには、本来しっかりとお金が集まるべきです。そして、そうした資金の流れが実現できれば、社会的な課題解決にも貢献できますし、投資家にとっても意義のあるリターンを得られる。その想いが、クリアル創業の原点になっています。クラウドファンディングを通じて、「不動産投資の民主化」を実現すること。これが、私たちの挑戦の出発点だったんです。

ー AIやICT、ファイナンス、そして不動産と、複数の高度な専門性が求められる領域を横断して事業を進めていくには、優秀な人材の確保とマネジメントが大きな鍵になると思います。採用の難しさや、同じ方向を向いたチームづくりにおいて、経営者としてどのような考えで取り組まれているのか、お聞かせいただけますか?

おっしゃるとおり、当社の事業は複数の専門性を必要とするため、立ち上げ初期からコアとなるマネジメントメンバーの採用に力を入れてきました。幸いなことに、以前のプロジェクトで一緒に働いた仲間や信頼できる人材に声をかけ、優秀なメンバーが集まってくれました。

私自身はITとファイナンスのバックグラウンドを持っていますが、他のメンバーは不動産投資、ファンド運営、IT、金融といった多様な分野で経験を積んでおり、それぞれが深い知見を持っています。この「不動産×IT×ファイナンス」の3軸でバランスよく構成されたマネジメントチームは、当社の大きな強みです。

組織づくりにおいて、私が大切にしている考え方は「任せて、任せきらず」です。特に当社は他の企業に比べて成長スピードが速く、組織の拡大も急ピッチで進んでいます。2017年の創業から5年で上場を果たしましたが、その背景には一人ひとりのモチベーションを重視した経営スタイルがあります。優秀な人材ほど、マイクロマネジメントを嫌います。自分ごととして仕事を捉え、責任を持ってやり切る。その環境を整えることが、企業の成長につながると考えています。

私自身、会社のビジョンやゴールは明確に共有しますが、そこに至るプロセスについては、あえて細かく指示はしません。課題だけを明確に示し、「どう解決するか」は各メンバーに委ねる。そして、結果が出るまで“目をつぶって耐える”。もちろん、適切なタイミングで声をかけ、進捗を確認することも欠かしませんが、信じて任せることが人を育て、組織を強くすると信じています。

ー 横田さんのようなご経験と人望をお持ちの方が、医療や福祉といった分野に関わることで、新たな価値が生まれる——お話を伺いながら、そんな可能性を強く感じました。経営者としての価値観や組織づくりの姿勢は、医療・福祉業界においても必ず活かせるものだと思います。その点についても、ぜひお聞かせいただけますか?

そうですね。私が大切にしている価値観のひとつは、先ほども申し上げた「任せて、任せきらず」です。大きな仕事を成し遂げるには、やはり有能な人材が自由に力を発揮できる環境が必要です。だからこそ、細かく管理するのではなく、ビジョンやゴールを共有したうえで、仕事は信頼して任せる。それが組織を成長させる鍵だと思っています。

私たちのコーポレートビジョンは、「不動産投資を変え、社会を変える」。これは単なるスローガンではなく、私自身が何度も口にし、社内に浸透させている言葉です。不動産投資は、これまで専門知識が必要で、情報も限られていた世界です。でも、ITの力を使えば、より多くの人がアクセスできるものにできる。私たちはそれを「不動産投資の民主化」と呼んでいます。

資産運用を、水や電気のように当たり前のものにする——そういう未来を目指しています。そして、その思いを何度でも繰り返し言葉にすることが、リーダーとしての責任だと考えています。

ビジョンと課題を丁寧に共有することで、優秀な人材は確実に育っていく。今、私たちのチームでそれが実現できていることを、とても誇りに感じています。

ー 価値観やビジョンの共有、そしてMV(ミッション・ビジョン)の実践は、組織が力強く持続するための大切な軸だと改めて感じました。社員の皆さんも、横田社長の思いに共感しながら、高いモチベーションで仕事に取り組まれていることと思います。今後の成長戦略や、新たな挑戦についてお考えがあれば、ぜひお聞かせください。

現在、当社では約10万人の投資家の皆さまに口座を開設いただいており、累計で700億円以上の資金をお預かりしています。1万円から始められるオンラインでの不動産投資サービスは、今後も引き続き成長させていきます。

その一方で、私たちは最近、証券会社を買収しました。これにより、不動産に限らない幅広い資産(アセット)への投資機会を提供できるようになります。とくに注目しているのが「セキュリティ・トークン(ST)」です。これは、ブロックチェーン技術を使ってあらゆる資産を小口化し、透明性の高い形で取引できる仕組みです。

私たちが目指すのは、株式や債券といった伝統的な金融商品ではなく、「オルタナティブアセット」と呼ばれる、より多様な投資対象です。たとえば、太陽光発電施設、船舶、航空機、さらにはウイスキーやワインなど、通常はプロの投資家しか手が出せないような資産にも、1万円から投資できる世界を実現したいと考えています。

不動産クラウドファンディングで築いたノウハウを活かし、個人投資家にも新たな選択肢を提供する。それが、私たちの次なる挑戦です。

今掲げている「不動産投資を変え、社会を変える」というコーポレートミッション。その先にあるのは、「資産運用を変え、社会を変える」という、より広い未来です。あらゆる人が自分らしく資産運用に取り組める世界を目指して、私たちはこれからも挑戦を続けていきます。

ー クリアル様のWebサイトでも拝見しましたが、ESG不動産の推進にも力を入れていらっしゃいますよね。現在取り組まれているプロジェクトや、ESG不動産に対するお考えについて、ぜひお聞かせください。

ありがとうございます。ESG不動産とは、私たちの定義では、日本の社会課題の解決に資するインフラ不動産のことを指しています。代表的なものとしては、介護施設や病院、保育園などが挙げられます。私たちはこれらの施設に対する資金調達を得意としており、これはクリアルのミッションであり、ある意味では「義務」でもあると考えています。

なかでも注目されているのが保育園ファンドです。これまでに複数のファンドを組成してきましたが、保育園に特化したファンドは特に人気が高く、数億円規模のファンドがわずか数秒〜十数秒で満額に達するほどです。公開と同時に投資が殺到する状況が続いています。この背景には、投資家の皆さんの意識の変化があります。単なる寄付やボランティアではなく、「社会に役立つことに、自分のお金を使いたい」「それが資産運用にもなるなら、なお良い」といった考えが広がっているのを感じます。

これまで、社会課題の解決と資産運用を両立できる選択肢は限られていました。しかしESG不動産投資は、その両方を実現できる貴重な機会です。今後、クリアルとしてもこの分野を主軸のひとつと捉え、積極的に展開していきたいと考えています。

ー 1万円から始められる不動産投資サービスに加え、東証グロース市場への上場も果たされています。先日発表された中期経営計画では非常に意欲的な内容と感じましたが、横田社長の中では、もう確信に近いビジョンが見えているのでしょうか。

実は今回、初めて中期経営計画を公表させていただきました。上場から3年が経ちましたが、ようやく「目指すべき道」がクリアに見えてきたと感じたタイミングです。

現在、当期純利益は約14億円ですが、今後5年間でそれを100億円まで引き上げるという目標を掲げています。年平均成長率で言うと約50%のペースですが、実は過去4年間は年平均100%の成長を続けてきました。今回の中計は、むしろ控えめな数字設定になっていると考えています。

背景には、社会全体の資産運用ニーズの高まりがあります。NISAの拡充もその一例ですが、NISAだけでなく、不動産のようなミドルリスク・ミドルリターンの選択肢が、これからますます注目されるはずです。私たちは、そうした投資をオンラインで、わかりやすく、そして安全に提供していくことを大切にしています。投資という行為を、特別なものではなく日常的なものにしていく。その文化が日本に根づいたとき、この中期計画の数字も、自然と実現していると信じています。

ー 現在の当期純利益が約14億円という中で、今後5年間で100億円を目指す——この成長性を踏まえれば、現時点での株価評価(バリュエーション)から見ても、「ここから10倍になっても理論的には不思議ではない」と考えることも可能かもしれません。

もちろん、株式投資は自己責任での判断が大前提となりますが、「これほどの成長戦略を描きながら、社会貢献性の高い事業を展開している企業が、国内に存在している」という事実を、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。