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16th September 2025

Zero-Second Thinking: Why It Matters Now

考える力がますます失われる時代に、“ゼロ秒思考”が求められる理由

Special Guest:AKABA YUJI

スペシャルゲスト:赤羽 雄二さま / ブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクター


ー 今日は「ゼロ秒思考」でおなじみのブレークスルーパートナーズ株式会社 マネージングディレクターの赤羽雄二さんをお迎えしています。2013年の出版以来、累計40万部を超えるベストセラーとなり、Amazonレビューは6000件以上。本日はゼロ秒思考の本質と、そこから派生する仕事術や生成AI時代への応用について、赤羽さんにお話を伺っていきます。まず、ゼロ秒思考」。なかなか「ゼロ秒」と「思考」はくっつかないように感じますが、この本を読ませていただくと、誰もが必要なことだと感じます。

そうですね。本当に大事なことで、人はその意味でいうと、みんなゼロ秒で思考できると、こういう風に考えてます。実際そういう風にされてますよね。

『ゼロ秒思考』の中で書いたものとしては、例えばイチロー選手などもボールがヒットされた、打たれた瞬間にその方向に走り出す、ちゃんとキャッチをするとかですね。そういうのもそうだし、大谷翔平選手も、基本的には全部みんなスポーツ選手はゼロ秒で考えているわけです。ここに0.3秒とか0.5秒止まったりしないわけですよね。ビジネスパーソンも同じだと、どんな人でも同じだと考えています。

ー じっくり考える『熟考』の方が良いという価値観の方もいらっしゃるかと思いますが。

熟考も大事なんですけれども、基本的には仕事がうまくいくか、あるいは会社経営がうまくいくかというのは、即断即決即実行即答にかかっています。『ゼロ秒思考』には「即断即決即実行」と書いていますが、この5年ぐらいは、私はさらに「即答」を加えて、「即断即決即実行即答」という言い方をしています。

ユニクロの柳井会長もよくおっしゃるように、それによって経営がより健全に、早く動く。人も早く動く。良いことだらけなんです。

ですから、通常、経営者あるいはビジネスパーソンは皆、即断即決即実行即答を目指していると思いますが、なかなか難しいと思っている方が多いと思います。実はできるんです。それがこのメモ書きによるトレーニングだということなんですね。

「熟考」というのは、次の社長を誰にするのかとか、次の部長をどうするのかとか、あるいはこの会社を買収すべきかとか、この事業に進出すべきかというところで、じっくり考えなければいけないことももちろんあります。しかし、実はできる経営者、あるいはできるビジネスパーソンは、もうほぼ瞬時に結論を出しています。

仮説はあり、その仮説を検証するプロセスには時間をかけますが、いわゆる「熟考」というのとは少し違うと思います。

将棋や囲碁で、何十手も先まで読むという言い方をよくしますが、あれも瞬時にいろんな手が見えていて、それを一つ一つ、どれをやるのがより良いのかということを考えているという意味での熟考、長考であって、目の前がよくわからない中で立ち往生しているという意味の熟考ではないと思います。ですから、割と全て即断即決即実行、即答ということで、本来はできる人たちはやっていると思います。

ー ゼロ秒思考ができない方へのトレーニングとして、メモ書きの重要性や継続の必要性が本書で語られています。この本を書かれようと思った原点や、込められた思いをお聞かせください。

私がマッキンゼーに入った時、上司からいろんなことを言われました。それを何とか書き留めなければならない。覚えていられないし、体験もすぐにできない。

色々なところに書き始めて、ノートに書いたり、あるいはカードに書いたり、色々なことをしたんですけれども、結局は、当時オフィスにあったA4の紙に、横置きにして左上にタイトルを書き、その中身を4〜6行で書くという形。一件一様にするのが一番いいということに数日経って気づき、そこから始めました。

ノートでもよかったのですが、ノートだとすぐに10冊ぐらいになってしまう。結局は表裏書いてはダメで、表だけに書いて一件一様にするというような、これも情報処理の大原則だと思いますが、自然に行き着いて、A4の紙になったということです。この大変な量の多様なアドバイスと、それを自分で身につけなければいけないという状況が、私のゼロ秒思考の原点です。

ー このゼロ秒思考が日本で広く受け入れられた背景については、どうお考えでしょうか。

これはやはり「ゼロ秒思考」というタイトルが良かったと思いますね。実際「誰でもできます」と。この本でメールアドレスを載せているので感想をいただいているのですが、「人は誰でも頭がいい」という言葉にすごく勇気づけられました、という反応が大変多いです。

日本で流行るということよりも、この考え方自体が最も基本的な人の頭の構造にフィットした言葉だったということです。実はこの『ゼロ秒思考』以降、私全部で27冊本を出させていただいていますが、海外で30冊翻訳、出版されています。アジアを中心に、内容はかなり普遍的に取り上げられていると思います。

ー 今なおA4のメモ用紙を用意し、手書きでやる、というのは変わらないということでよろしいでしょうか。

そうですね。これは私もずっと論文を探しているのですが、近いものとしては、アメリカの研究で、大学の授業をタイプしてノートを取るよりも、授業ノートを手書きで取る方が、記憶に残って成績が良かったというのがあるようです。タイプすると、聞いたものをほとんど考えずにそのまま手が動いて画面に映していくようなことになり、記憶にあまり残らない。一方、手書きにした学生の方が記憶に残ったという論文が一番近いですね。

ただ実感としては、自分の気になることだとか、思いついていることをさっとタイトルに書いて、その下に4〜6行、20〜30字を書く。それを1分で書くと。1日10から20ページ、あるいは特に嫌なことがあったときには多面的なメモ書きをして30ページ一気に書く、2、30分でですね。そうすると、明らかに頭がすっきりするし、新しい考えが出てくるし、もやもやもなくなっていくという実感があるんです。これ、手書きにしないと多分できないと思います。

私はこのゼロ秒思考のメモ書きをアクティブ瞑想と呼んでまして、瞑想はなかなかできないんですよね。心を無にして瞑想するということは、なかなかできない。ところがメモ書きをすると、ある気になった言葉をタイトルにして4〜6行20〜30字を5ページも10ページも、あるいは2、30ページも続けて書くというと、これはアクティブですよね。頭に浮かんだことを吐き出しているのですが、それが実は瞑想に近い状況になっている可能性が高い。もっと言えば、これがフロー状態ですね。

ー メモ書きは、心を無にする瞑想とは違う、「アクティブな瞑想」のような効果があるということですね。そして、そのメモ書きは、日本人が抱えるある根本的な問題にも効くというお話ですが、具体的にどのような問題でしょうか?

少し補足しますと、日本は結構自信がない、自己肯定感が低いという方がとても多いんですよね。私は企業の経営改革をずっとやってきていますが、自信がない方が本当に多い。9割方そうだと言えます。

この自信がない、自己肯定感が低いというのは、実は愛着障害というものを考える必要があって、これを解決するかなり有効な手段の一つが、ゼロ秒思考でもあるんですよね。仕事もできるようになるだけでなく、愛着障害を減らして、人間関係や家族関係を良くする手段にもなります。

この自信のなさというものを変えていくのがメモ書きです。なぜかというと、メモ書きをすることによって、自分の気持ちの不安定さだとか、怒りだとか、そういうものをタイトルにして4〜6行を書くということを続けていくと、自分がなんで自信がないのかとか、なぜ腹が立ったのかとか、なぜ部下にちゃんと指導ができないのかとか、随分見えてくるんですよね。見えてくると、そうだったのかということで反省することができるし、他責ではなく自責で見ることができるし、何をどう変えればいいかということも見えてくる。

心が整理されてくるので、メモ書きをすることによって自信が回復する、あるいは自信が生まれていく。人間関係も良くなっていく。そうすると悩みも減っていく。当然ながら仕事もできるようになる。こういうふうなことが多いんですね。

ー 日本企業と諸外国との差、生成AIの活用事例のようなもので、日本が遅れているところがあるといったお話があればお伺いしたいのですが。

遅れているというより、全てにおいて遅れています。IT化が遅れました。その差は大変な状況です。またこの10年ぐらいはDX。これも大きく遅れました。

今回、AI活用で凄まじく差が開いている状況なんですが、ここに最後のチャンスがあると考えています。AI活用するためには、その地域地域のデータが大事なんですね。大規模なLLMとは違い、医療AIだとかコーチングAIだとか、不動産AIとなると、その地域の情報がどうしても必要です。

こういう応用は日本人めちゃくちゃ得意なんですよね。日本人は応用がめちゃくちゃ得意です。他の国で発明されたものを世界一にするのが得意なんです。AIを活用した医療、農業、コーチング、仕事の仕方、企業経営といったものを、他の誰よりもうまく取り入れていく可能性は十分あると思います。

大規模な本格的LLMはアメリカなどで開発されますが、オープンソースにもどんどん出ていますので、それを使って自社の事業が最先端の段階で使う。これは多分非常にうまいですね。そこに、ハードウェアが得意な日本企業の特色を生かすと、介護とか、農業などで、今までアメリカなどが進んでいたものを一気に挽回する可能性がAIにはまだ残っている。ここにしかもうない、こんな感じがしています。

そのためにも、頭をシャープにしてものを考えて、自分の意見を持って自分の意見を言うということができて、自分のやりたいことがやれる。こういう文化を国に変えなきゃいけないので、ここにはゼロ秒思考のメモ書きは、今も100年後も非常に重要な手段だと思います。

頭を鍛えるには、AIをどう使いこなすかじゃなくて、頭のサーキットトレーニングをする必要があるんです。これがメモ書きで1分で書く。1分で書くことが非常に大事で、1分でタイトルを書き、4〜6行20〜30字を書き、それを毎日10〜20ページ書くことによってサーキットトレーニングしてるわけです。それをやっていると、だんだんといろんなことに関して、ゼロ秒で物が考えられるようになる。これ、別の表現をすると仮説思考なんです。

原点は頭の中を全部吐き出す。それがメモ書きです。A4の紙を目の前に置いて、思いついたこと、気になっていること、腹が立つことをタイトルに書いて、その後4〜6行をパーッと書いてやっていくと、どんな人も大谷翔平さんに近づくことができるんじゃないかと大いに思っています。

ー 心の安定と頭の高速回転を両立できる「ゼロ秒思考」は、現代社会の様々な不安の中で改めて注目されています。まずは実践することが大切ですね。

これは気持ちが良くなると、悩みが減る。うつ病防止にもなりますし、家族に対するモラハラ、DVなども減っていきますし、部下との関係、上司との関係も良くなるので、ぜひとも食わず嫌いではなくてやってみる。1分でとにかく書くというのを。何か思いついたら、腹が立ったら、気分が悪くなったら、もやもやしたら、すぐ書く。これをやると人生が変わります。

また、書いている中で迷った時は、ネットで検索していただくと私のメールアドレスが出てきますので、あるいは本の後ろに書いていますので、ぜひ遠慮なしにメールください。頭がもやもやしたら、気分が悪くなったら、とにかく書いてみてください。A4の紙を置いて、左上にタイトルを、右上に日付を、4〜6行を思いついたまま吐き出して。汚い言葉や罵詈雑言、全く構いません。誰かに対する恨みさえも書くことで、頭がどんどん動いてきます。吐き出すと気持ちよくなってくる。その恨みさえも減っていきますので、ぜひ吐き出してください。

ー 力強い言葉、そして誰でもできるという勇気をいただきました。本当にありがとうございました!