Special Guest:AKUTSU TAKEO
スペシャルゲスト:阿久津 岳生さま / 株式会社WHERE 代表取締役社長
ありがとうございます。僕たち株式会社WHEREは、宇宙の技術を使って地上の不動産市場を変えよう、というビジョンを掲げて2022年からスタートしたチームです。
宇宙技術の中でも「衛星データ」を活用していて、衛星データをAIで解析し、地球上の価値ある不動産を自動で見つけます。その上で、僕たちが法務局の登記データとシステム連携して、誰がその土地を持っていて、どこに住んでいるのかまで一気通貫で分かる仕組みを最初につくりました。
その後、その土地の広さや現況、建蔽率・容積率、ハザード情報、周囲の人口推移、評価額など、その土地に関するさまざまな情報を一瞬で確認できるようにしました。そんなシステムになっています。
ありがとうございます。僕はこれまで8社を起業して経営してきて、あわせて3つの大学院で研究してきた経験があります。その8社の多くは不動産会社や建築会社など、関連する分野の会社でした。
その中でよく言われていたのが、「不動産流通においては、上流を制する者が市場を制する」ということです。つまり、良い仕入れができれば、不動産流通でいう下流──家を建てたり、店舗を経営したりといったところまで、すべて掌握できる。だからとにかく上流を押さえることが鉄則でした。
ただ、その上流の情報というのが本当に簡単には手に入らない。僕が一度調べたときには、平均で71%が今でも人脈などアナログな手法に頼っている、というのが現状でした。
そうした課題を感じていた頃、僕が通っていた3つ目の大学院はJAXAの中にある大学院で、そこで宇宙技術を研究として学んでいました。そのとき出会ったのが、月の衛星データをAIで解析する技術です。この研究を見たときに、「これ、不動産の土地仕入れの課題解決に使えるんじゃないか」と思ったのが最初のきっかけでした。
幸い、その研究をしていたメンバーがJAXAにいたので、「地球でも、駐車場や空き地、空き家になりそうな古い家をAIで自動的に衛星データから見つけられるのか」と相談したんです。そこから始めたところ、「数週間でできますよ」とプロトタイプが出てきました。そこから、宇宙からの視点でさまざまな物件がピックアップできるようになりました。
さらに面白かったのは、衛星データを使っているので日本国内だけでなく、ニューヨークの空き地や、フランス・パリのエッフェル塔周辺の駐車場など、世界中の不動産まで探索できたことです。「これは本当に不動産業界の課題を解決できるし、世界を変えられるかもしれない」と強く感じました。
そう思って、「じゃあこれを本格的にやろう」と決意し、WHEREの開発が2023年から始まりました。
はい。衛星というのは地球の周りをぐるぐる回りながら、上空から画像を撮っていくわけですね。鳥の目のように、上から地表を見下ろす形になります。
ただ、その膨大な画像の中から人間の目で「どの物件がいいのか」を見つけるのは、量が多すぎてとても処理しきれません。そこでAIが登場します。「こういう空き地を探してほしい」と指令を出すと、AIが「ここにありますよ」という形で候補をピックアップしてくれるわけです。
そこから得られた情報に対して、「その土地が本当に良いかどうか」という判断軸は人によって違います。例えば、家を建てたい人が求める空き地と、お店を建てたい人が求める空き地は少し条件が違いますよね。その人のニーズに合わせて、価値ある不動産をAIが見つけてくれる。そういう仕組みになっています。
2023年のリリース以降、ユーザーはディベロッパーさん、不動産仲介会社さんが多く、その後、土地活用を行う企業さん、コインパーキング会社、トランクルーム会社なども使ってくれています。
最近は太陽光発電の設置場所を探すニーズも多いですし、不動産業ではない企業、たとえばコンビニやスーパーが「不動産情報を待っていられない」と、自分たちで出店候補地を探索するために使うケースも増えています。
不動産のプロがより評価される時代になると思います。情報を右から左へ流して収益を得るのではなく、専門知識を生かし、買い手・売り手に正しい情報を届け、信頼される人が活躍する――そういう世界になると思います。
やっぱりこのマーケットの規模には本当にワクワクしているんです。世界の不動産市場というのは今、1000兆円を超えると言われています。ただ、この1000兆円という市場は、地球上にある不動産のうち、年間で1%にも満たない取引だけで成り立っているんですね。
つまり、今はその1%に出てきた不動産を、みんなで取り合って1000兆円の市場ができている。でも実は、その1%以外に、99%もの未開拓の不動産市場が眠っているわけです。
僕たちがつくっているWAREというのは、この99%の未開拓不動産市場を開拓できるツールになっています。そして、この99%を市場規模として計算すると、なんと10京円という規模になる。兆を超えて“京”の世界、超巨大な市場がまだ眠っているんです。
しかし、その巨大な市場を新しいテクノロジーで切り開いていこうという企業は、世界を見てもほとんどありません。だからこそ、私たちはその巨大な市場に、新しい技術を使って世界で初めて切り込んでいく。ファーストペンギンとして世界を変えていきたいと思っています。
そして、その挑戦に僕は人生をかけています。
そうですね。不動産はたくさん建築しているように見えても、常に動いているわけではありません。だからこそ「動いた瞬間」をどう見逃さないかが重要で、それを効率的に見つけられるのがWHEREです。
そうとも言える部分はありますけれども、実は起業自体は8社なんですが、スタートアップとか新規事業みたいなものに関しては、実は12回連続で失敗してまして、今回13回目の挑戦でようやく軌道に乗り始めた、というのはやっぱりあります。
8社起業しているといっても、全部ほとんど中小企業としての形で、結構なんていうんですかね、世の中にないサービスをやりたいと思ってチャレンジしてきたんですが、そういうものはやっぱりことごとくうまくいかないんです。
でも、そのたびに「これはいける」と思ってやるんですけど、失敗する。それで、13回目で「これもいける」と思ってやったら、ようやくうまくいった、という。そんなふうに、実はもう行き当たりばったりみたいなところが正直あります。
やっぱりですね、そこはよく「そんなに失敗して、よく立ち直れましたね」と言われるんですが、実は立ち直っている時間がないというか、立ち直っている感覚がないんです。僕が大事にしている価値観というか理念がありまして、それが「おっ!」をつくる、というものなんです。驚いたり喜んだりする瞬間の「おっ!」ですね。これを世の中にたくさんつくっていきたいと思っていて、そのために生きているというか、エネルギーを全部そこに使っている感覚です。
これは「おっ!」だ、「おっ!」つくれる!と思ってやるんですけど、失敗するとまた「別の「おっ!」をつくらなくちゃ」となる。そんな感じで、もっと面白い「おっ!」がないかと、ずっと探り続けている、そんな感覚があります。
よく「失敗は、やり続ければ失敗じゃない」と言われますけど、本当にその通りだなと思っていて。今回の13回目の挑戦で、最初に決めたのはたった一つ、“続ける”ということでした。そこだけは必ず守ってやっていこう、という気持ちでやってきたところがあります。
そうですね。僕も2つ目の大学院でMBA、つまり経営学を学んで、経営のノウハウなどいろんなことを勉強しましたが、やっぱり最後に支えてくれるのは、“不屈の精神”とか、そういう部分なのかなと感じています。
先ほど話した10京円市場ですが、すでにそこから実例が生まれています。たとえば15階建て・100戸超のマンション建設が進んでいたり、コインパーキングの新設が増えていたり、さまざまな事例が出てきています。
こうした事例を共有する場がなかったので、「自分たちでつくろう」と始めたのが宇宙不動産カンファレンスです。JAXAの方々も応援してくださり、講演団体として協力してもらっています。
12月2日、オフラインは銀座の時事通信ホール、参加は無料です。オンラインも同じく無料なので、ぜひ参加していただきたいです。
「宇宙 × 不動産カンファレンス2025」