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06th January 2026

Generative AI: A Brilliant New Hire Anyone Can Afford

生成AIは、誰でも雇える“超優秀な大型新人”
戦力化の鍵「AIオンボーディング」──バクラクが変革するAI活用の第一歩

Special Guest:INADA HIROTO

スペシャルゲスト:稲田 宙人さま / 株式会社LayerX AI-DX経理改革コンサルタント


ー 今回のキーワードは生成AIの戦力化です。本日のゲストは、株式会社LayerXにてAI-DX経理改革コンサルタントとして活躍する稲田宙人さん。同社代表取締役CTOの松本勇気さんが2025年10月に出版し、話題となっている『生成AI「戦力化」の教科書』をベースに、お話を伺っていきます。生成AI、戦力化、教科書という3つのキーワードが並ぶ本書ですが、まずはその概要とエッセンスについて、稲田さんからご紹介いただけますでしょうか?

ありがとうございます。

2022年にChatGPTが登場し、活用されている方も多いかと思います。しかし、単なるチャットボットとして使っているだけであったり、利用率が上がらず困っているといった課題も顕在化してきています。

こうした状況を受け、弊社CTOの松本勇気が、ソフトウェアエンジニアおよび経営者としての経験、そして大企業における実際の生成AI導入プロジェクトで培った知見を体系化し、まとめたものが今回の書籍です。

本書の特徴について申し上げます。 最大の特徴は、AIを「新入社員」と捉え、人材育成になぞらえて解説している点です。AIといえども、自社独自の規定や振る舞い方をしっかりと教えなければ、なかなか機能しません。いわば、まだ自社独自の知識を持っていない新入社員のような存在だからです。

このようにAIを教育し、戦力化していくプロセスを、弊社では「AIオンボーディング」と呼んでいます。この具体的な手順やノウハウについて解説している点が、本書の大きな特徴です。

ー 稲田さんが提唱されている『AIは誰もが雇える大型新人である』という点について、その言葉の真意や、具体的にどのような可能性を秘めているのか詳しく教えていただけますか?

そうですね。 現状の社会的な期待値としては、チャットボットに「こういう業務をやってほしい」と指示さえすれば、全ての業務を自動的かつ自律的に行ってくれるものだとイメージしがちです。しかし、実際の現場の状況は、まだそういった状態ではないと考えています。

やはりAIというのは汎用的な知識、いわば世界中に存在している情報の「平均値」を取ってきて、それを基に回答するという仕組みになっています。 そのため、どうしても業務上必要となる自社独自の規定や運用ルール、さらには社内の「暗黙知」といった情報まではカバーできていません。

こういった独自の情報をしっかりとAIに学習させていかないと、業務を完璧に遂行することはできないと考えています。ですので、まずはこのあたりの認識をしっかりと持っておくべきではないでしょうか。

ー 稲田さんは『バクラク』のプロダクトマーケティングやGTM企画を統括され、様々な企業の現場課題に深く向き合ってこられたと伺っております。改めて、この『バクラク』というプロダクトの特徴や、レイヤーX様の主要なサービスについてご紹介いただけますでしょうか?

私どもは「バクラク」というサービスを展開しております。 こちらは名前の通り、「爆裂に楽になる」というイメージを持っていただければと思います。

具体的には、稟議や請求書の処理、経費精算といった企業のお金の流れに関する部分はもちろんですし、それ以外にも勤怠や労務管理といった、いわゆるバックオフィス領域全般をカバーしています。 こうした業務を、AIエージェントを活用しながら効率化していくクラウドサービス、それが「バクラク」となっております。

ー 多くの中小企業が『生成AIをどう自社の経営課題解決や実装に結びつけるか』という点で苦労しており、まずは小さな成功体験を積むことが重要だというご指摘がありました。 その点、『バクラク』はその第一歩として大きな力を発揮するツールだと思いますが、実際にどのような導入事例があるのでしょうか? 特に、医療・福祉業界などの例も含め、具体的な成功事例を教えていただけますか?

成功事例の前に、先ほどのお話への補足といいますか、お返事になるかと思います。 おっしゃる通り、世の中では「AI活用」というものを少し大きく捉えすぎている側面があると感じています。「業務をすべて変えなければならない」とか、「ものすごく大きな取り組みをしなければならない」と考えがちですが、もちろん経営上の重要なテーマ(イシュー)ではあるものの、そこまで身構える必要はないのではないかと思っています。

弊社のスタンス、そしてサービスの特徴でもあるのですが、「AIは100%の精度が出るわけではない」という前提に立ちつつも、業務プロセスの一部を効率化することは可能です。業務フロー自体を無理に変えることなく、人とAIが協働し、業務の中にAIを自然に組み込む形で効率化できるのであれば、活用する価値は大いにあります。 こういった「最初の一歩」としてのDXやAI活用をご支援できる点が、「バクラク」というサービスの大きな特徴だと思っております。

具体的な事例をご紹介します。 例えば、愛知県で介護施設を展開されている株式会社寿寿(JUJU)様です。こちらの企業様では、各施設のスタッフの方による経費精算の効率化が非常に大きな課題となっていました。 そこで、弊社の「バクラク経費精算」というサービスをご導入いただきました。スマホアプリで領収書の写真を撮ると、一括でデータが分割され、会社で必要となる内訳や勘定科目といった情報も自動的に入力されます。 これにより、人とAIが協働して業務を合理化できた事例の一つです。

また、兵庫県立病院局様の事例もございます。 こちらでは、毎月束になって届く2,000枚、数千枚という請求書の処理が課題でした。これらをまず電子化したい、そしてその中での「仕訳業務」も効率化したいというご要望があり、弊社の「バクラク請求書受取」をご導入いただきました。

このサービスでは、振込情報や金額情報のデータ化、仕訳の自動化はもちろん行います。 特に、こういった福祉系や介護系のお客様ですと、本部に請求書が一括で届くものの、その内容を各拠点や各部門ごとに「費用按分(あんぶん)」しなければならないケースが多くあります。 これまでは担当者が中身を見ながら「これはこの部門の費用だな」と考えて処理をしていましたが、弊社のサービスでは明細を自動的に読み取り、「これはこの費用部門」「これはこの勘定科目」といった分類まで自動で行う機能があります。

最終的に、人はその結果をチェックするだけで済みます。 「請求書を受け取る」という業務自体も、その後の処理フロー自体も大きくは変えていませんが、処理の実務をAIが肩代わりし、人はチェック業務に集中できるようになる。こういった形の協働体制を築ける点が、バクラクにおけるAI活用の成功事例だと考えております。

ー 株式会社LayerX様は『すべての経済活動をデジタル化する』という壮大なミッションを掲げていらっしゃいます。 足元では『バクラク』が多くの企業の課題を解決していますが、当然そこで止まることなく、その先にある『AIエージェントによる完全自動化』といった未来も見据えていらっしゃるのではないかと思います。 今後どのような未来を描き、どのような世界を作っていこうとされているのか、そのビジョンについて教えていただけますでしょうか?

ありがとうございます。 まず、どういう世界を実現するかというミッションについてお話しした上で、その後の弊社の事業の未来像についてもご紹介できればと思っております。

今ご紹介いただいたミッションですが、改めて申し上げますと「すべての経済活動をデジタル化する」ということを掲げております。 その中でも現在は、AI-SaaSの「バクラク」事業やフィンテック事業、AIワークフォース事業といった、いわゆる文書業務を中心とした領域にまずは取り組んでいる状況です。

目指している世界観については、弊社の行動指針である「Bet AI(ベット・エーアイ)」という部分にも関連してくるのですが、「AIエージェントを通じた業務の自動運転」を目指しております。 自動車の分野でも「完全自動運転のレベル分け」というものがあるかと思いますが、これを弊社独自に定義し、「業務の自動運転」についてもレベル分けを行っております。

弊社としては、その中でも「通常の運用範囲においてはシステムがほぼ完全に業務を遂行できる」という状態をまずは目指しており、この実現に向けて、現在AIエージェント事業を加速させているところです。

今後の事業の未来像という点では、2030年までにARR(年間経常収益)1,000億円、そのうちAIエージェント関連事業で500億円を生み出すという目標を掲げております。 この目標に向け、直近の9月には資金調達も実施し、現在邁進している状況でございます。

ー 書籍の中では、業務の自動運転レベルを0から5までの6段階に分けて解説されています。現在は、人間が主体となりAIが一部を自動化する『レベル2』前後とのことですが、最終段階であるレベル5『あらゆる条件下でAIが全ての業務を実行・完了できる完全自律業務』という世界は、やってくるかどうかを議論するのではなく、『必ずやってくる』という前提で、それが『いつになるのか』を考えるべき段階にあるのでしょうか?

やってくるとは思いますが、それが「2〜3年後のすぐそこか」と言われると、決してそうではないと考えています。

いつかやってくるであろう未来に向けて、まずは足元のレベル2から、レベル3、レベル4へと、一段ずつ確実にハシゴを登っていく。今はそんなフェーズなのかなと思っております。

ー AIを『魔法のボタン』のように捉えるのではなく、レベル1から4までのステップを着実に踏まなければレベル5には到達できない。この『一足飛びにはいかない』という現実を、まずは正しく認識することが不可欠だということでしょうか?

そうですね。 ただ一点補足するとすれば、「リープフロッグ(カエル跳び)」のような形での進化は起こり得ると思っています。

これまで全くAIを活用してこなかった方が、これから新しく導入しようとする場合、必ずしもレベル1、レベル2と順番に階段を上る必要はありません。すでにレベル2やレベル3の機能を持ったシステムが存在していますので、そういったものを活用することで、途中のプロセスを一段飛ばしで進めることができます。

これからAIを使い始める方にとっては、先行して使い始めていた方々よりも、活用の幅や受けられる恩恵を一足飛びに享受できるチャンスがあるのではないかと思っています。

ー 後発の利点(リープフロッグ)がある一方で、『もっと待てば楽ができるのではないか』と静観するのではなく、たとえ今後さらに便利なツールが登場するとしても、今この瞬間に危機感を持って試行錯誤を始め、AIに慣れておくことこそが重要だということでしょうか?

これはその通りだと思います。 これまでは前例がない中で、「自分たちはどうやってレベル1に上がるか、レベル2に上がるか」と手探りで考えなければなりませんでした。

しかし、現在では我々のようなAI企業が、すでにレベル1やレベル2での実績をどんどん積み上げてきています。そうした既存の知見をうまく活用することで、ショートカットできる部分は確実にあります。

ですので、過度に恐れる必要はありません。危機感を持ちつつも、利用できる知見は賢く使いながら、しっかりと活用を進めていただければいいのではないかと思っております。

ー 先延ばしにせず今すぐ踏み出すべきですが、ゼロから悩む必要はないということですね。すでに実績のあるAI企業の知見を借りることで、一気に『レベルの階段』をショートカットできる、という理解でよろしいでしょうか?

ありがとうございます。 そうですね。LayerXは、本当に平易な言葉になってしまいますが、とても「いい会社」だなと思っています。私自身、この会社に飽きるというイメージが全く湧かないんですね。

魅力について申し上げますと、やはり事業立ち上げのスピードが非常に早いですし、事業の数も非常に多いです。そして、それらすべての事業が「すべての経済活動をデジタル化する」というミッションにしっかりと繋がっています。ミッション、行動指針、そして実際の事業展開が一貫している点が、この会社の非常に良いところだと感じています。

また、すべてのメンバーが「顧客の成功」や「社会を前に進めること」を第一に考えています。その過程に事業の成長があり、結果として自分自身の成長がある。そのような繋がりをしっかりと意識して働いている人が多いですね。 とにかくお客様に向き合って働ける環境として、最高な場所なのではないかと思っております。

ー バックオフィスから全社的なDX、さらには日本を代表するスタートアップとしての飛躍まで、LayerX様の今後には非常に大きな期待が集まっています。注目の集まる『バクラク』の展開や、今後のビジョンについて、改めてリスナーの皆さまへメッセージをいただけますでしょうか?

今回は福祉・介護業界の経営者の方が多いかと思いますので、マクロトレンドも踏まえたメッセージをお伝えできればと思います。

現在、避けて通れないのは労働人口が減少していくという状況です。特に福祉・介護業界においては、経営体質の改革や利益構造の改革がこれまで以上に必要になってくると考えています。 そこで繰り返しになりますが、AI活用をあまりに大きく捉えすぎないでいただきたいのです。

AIは「100%の精度は出ない」という前提に立った上で、まずは活用できる範囲から、着実に効率化を進めていただきたいと思っています。その際、重視していただきたいのが「3つのレイヤー」です。

まず、一番大切なのは「経営層」です。「AIを活用して業務を効率化するんだ」「経営体質を改革するんだ」という、トップダウンの強い意志が何よりも大前提となります。

次に「現場」のレイヤーです。「この業務をもっと楽にできないか」といった、具体的なユースケースに基づいたボトムアップの提案や、AIを活用しようとする意志が重要です。

そして最後が、その中間にある「インフラ・ガバナンス」のレイヤーです。AIを安全に活用するための最低限のガードレールや環境を整備すること。この3つのレイヤーがしっかりと整うことで、AI活用は強力に推進されます。

まずは難しく考えすぎず、経営者の方ご自身が「しっかりやっていくんだ」という思いを現場に伝え、推進しきること。その「思い」こそが最も大切だと考えています。ぜひ、そうした姿勢でAI活用を進めていただければ幸いです。

ー 今やAI活用は「自分ごと」として向き合うべき喫緊の課題です。まずは『生成AI戦力化の教科書』を手に取り、そして「バクラク」のようなサービスを通じて、最初の一歩を「爆裂に楽に」踏み出してみてください。2026年、この一歩が皆様のさらなる成長と発展に繋がることを確信しております。本日は貴重なお話をありがとうございました!